精神科の看護師っていつも何をしてるの?仕事内容はどんなもの?
内科や外科などの一般科と違って、精神科の病棟では点滴や処置が少ないです。ましてや手術なんてありません。看護学生さんや、一般科に務めてる方は精神科の看護師が何をしてるのかって想像しづらいですよね。
今日は私、やみかんのとある1日を紹介しながら精神科看護師の仕事についてお伝えしていきます!
病棟は精神科、慢性期の閉鎖病棟(病棟に鍵がかかっており、患者さんが自由に出入りできない病棟)です。もちろん全ての精神科がこう、というわけではなくあくまで一例だということをご了承ください。
精神科独特の要素があるなと思う項目は★マークをつけたので、そこだけ気になるって方は目印にしてくださいね。なお、時間はだいたいの目安です。
それでは、どうぞ。
8:50 出勤
看護師って情報収集のための前残業(もちろん残業代無し)当たり前のように行われていますよね。必要があってそうなるのでしょうが、サービス残業は良くない風習だと思います。
私の病院では、働き方改革の流れで、始業前のサービス残業を無くそうという動きが強まっています。ですので、今は10分前に病棟に着けばいいや、ぐらいの気持ちで出勤します。
更衣室のせまーいロッカーでナース服に着替えますよ。(看護師のロッカーって何でこんなに細いんでしょうか。使いづらくて仕方ないです…)
9:00 ミーティング
勤務開始時間になると、深夜さんの申し送りがスタート。病棟にいる患者さんの出入りや特に重要な患者さんの情報をまとめて聞きます。
お次に師長さんから、看護部の連絡を聞きます。今日は業者の出入りがある、電子カルテの点検がいつ何時で、など病院全体の情報を共有します。
続いて、本日の担当患者さんの情報を電子カルテからとります。パソコンの数には限りがあるので、取り合いになるのが嫌な方は早めに来て情報を取っていることがあります。
具体的な情報として、自分が勤務していない間(前回の自分の勤務後)に、患者さんに変化が無いかをカルテから拾います。不穏になっていないか、逆に退院に向けて進んだことはあるか、など。あわせて今日やるべき検査・処置・面会の予定・買い物の希望など。また明日予定も合わせてチェック。薬が切れたりしたりしないかは大事な確認事項です。
個々の情報収集が終わったら、チームごとに情報の共有。患者さんの特記事項と必要なケア、看護師の動きを伝えます。保護室の患者さんのケアや入浴介助など、1人では難しいケアはここでリーダーを通して協力を依頼します。
9:15 ★カンファレンス
精神科では患者さんの安全のために「隔離」や「拘束」を行うことがあります(身体拘束は一般科でもありますね)。精神科は他の医療分野とは違う法律で動いています。
それは「精神保健福祉法」です。精神保健福祉法の中には「医療又は保護に欠くことのできない限度において必要な行動制限を行うことができる」とされています。その法律に基づいて患者さんの自由度を制限しています。
しかし、隔離や拘束は患者さんの人権を侵害するもの。しないに越したことはありません。他のあらゆる手をつくしても患者さんと周囲の安全が保てない時のみに必要最低限行われるべきです。
ですので、毎日病棟スタッフは、患者さんの隔離や拘束を少しでも無くす方向に持っていけないかと話し合いが重要なのです。
情報の共有と治療の方向性を一致させるために、看護師だけでなく、医師や精神保健福祉士(PSW)など多職種で話し合うことがより大切ですね。
9:30 担当挨拶・環境整備
ミーティングが終わり次第、担当挨拶と環境整備に行きます。環境整備は簡単に言えばお掃除です。
挨拶をしながら、今日の予定を確認します。検査や面談の予定など患者さんが覚えていないこともあるので、きちんと確認することが必要です。
その後、患者さんのベッド周りの整理整頓を行います。衛生を保つ、という目的もありますが、同時に整頓を促し習慣化することで患者さんの生活力の向上(入院期間が長くなるとどうしても看護師に甘えてしまいがちになるものです)をはかったり、危険物がないか、異変はないかなどを確認したりします。
たかだかお掃除と侮るなかれ。患者さんが安全・安楽で過ごすために環境整備はとっても大切。例えば、床が濡れていたら高齢の方はは滑って転ぶ危険がありますよね。さらに、調子の悪い患者さんは症状に左右されて突拍子もない行動を起こすことがあります。例えば、身の回りのもので自分を傷つけようとしたりなど。そういった異変を察知するためにも環境整備は大事なのです。
検温(熱や脈拍をはかる)は、朝食前に行います。しかし、熱が出ているなど1日3回測る必要がある時などはこのタイミングでバイタル(熱や脈)を測ります。
10:00 作業療法への送迎
精神科におけるリハビリテーションの一つに、作業療法というものがあります。
作業やレクリエーションを通して作業能力や対人関係、精神機能の改善や向上をはかり、その人らしくより良い生活を営むためのものです。具体的に言うと、手芸や農耕作業、陶芸、ヨガ、音楽療法などです。
医師から作業療法の指示が出来ている患者さんは、病院内の作業療法室に向かいます。
しかし、中には「病棟の外に行くときは誰かと一緒でなければならない」といった医師の指示が出ている患者さんもいます。患者さんや周囲の人の安全を守るためですね。その時は、看護師が付き添ってお部屋まで送迎します。
10:30 処置
この時間と決まっているわけではありませんが、精神科でも処置があります。
精神科特有のもので言えば、精神科薬の筋肉注射があります。毎日お薬の内服が難しい患者さんに、2週間に1度など定期的に筋肉注射をすれば効果が持続するものがあります。今までの経験上、肩への筋肉注射よりも、より痛みの少ないお尻への筋肉注射をする患者さんが多いです。
あとは、薬の影響で便秘になる方が多いため、浣腸なども度々行います。
11:30 ★昼食の配膳・内服の見守り
精神科では、患者さんは基本的に部屋ではなくホール(食堂)でご飯を食べます。精神症状でご飯に集中できなかったり、薬の影響で飲み込む力が弱っている場合があります。看護師の見守りが必要な方が多いです。一人ひとり見ていることは出来ないので、食堂で食べていただくところを数人の看護師が見守るといった形になります。
保護室に隔離されている患者さんは、基本的に個室の中で食事をしますので、きちんとご飯を食べられているか扉の外ではありますが、近くで確認して回ります。
食事が終わった方から、昼食後の薬を配ります。お薬を渡すときには6Rの確認をしっかりと。
具体的には患者さんに自分から名乗っていただきます。患者さんと看護師の二つの目で確認して間違いがないように気を付けます。薬の間違いは重大なミスですので、とても気を使うところです。中には、内服の必要性が理解できなかったり、薬の確認が出来ない方もいます。その時は看護師が2人で確認してからお薬を渡します。
退院に向けて進んでいる人は、患者さん自身が薬を管理しています。その時もきちんと薬を飲めているか、間違いがないか念のために看護師も確認します。
12:30 昼休憩
患者さんの昼食と薬の内服が終わったら、軽くミーティングをして看護師も昼休憩に入ります。
ナースステーションが空っぽになっては患者さんの対応や電話が来たときの対応が出来ません。ですので、数人が時間をずらしながら取ります。
お昼はお弁当を作ってきたり、買ってきたり。コロナウイルスの流行前は、休憩室でおしゃべりに花を咲かせながら、時に仕事について熱く語りながらみんなでお昼ご飯を食べたものです。
現在は感染対策のため、同じ部屋で2人以上が同時にご飯を食べることが無いように、カンファレンスルームなどを使用しています。少し寂しいものですね。
午後からしっかり働くためにも、時間いっぱいは休憩をとるようお互いに心がけています。
余談
看護師あるあるですが、食事中でも割と普通に尿とかお通じの話をしたりします。「今日○○さん便秘だから浣腸しないとね」「××さんおしっこ全然出てないけど、脱水になってないー?」など。抵抗感が薄いです。家族や友人など看護師以外の人と食事する時でもたまにやらかしちゃうので気を付けないといけないですね。
13:30 ★入浴介助
病棟によると思いますが、入院患者数が多くなってしまう慢性期閉鎖病棟では複数人が同時に入浴することが多いです。銭湯のイメージですね。
なのでシャワーが3,4個あり、浴槽も数人が一緒に入れる広さになっています。もちろん、自分一人で入浴ができる患者さんもいます。しかし、身体的な不調で自分一人で入浴できない方や、精神的な不調で自分で服の脱衣が出来ない、自分で髪を洗えないといった方は看護師が手伝う必要があります。適切に衣類を選べない、といったことも多いので準備の段階から手伝います。
体は健康でも、精神的な不調、もしくはお風呂に入る必要性が理解できないために介助が必要になってくるのです。
入浴介助のイメージとしてはデイサービスが近いかもしれません。ナース服が濡れてしまうので、エプロンや長靴を装着したり、上はTシャツになって介助をします。浴室は湿度も温度も高いので冬でも重労働です。
ただし、精神科では男性看護師は男性患者の介助、女性看護師は女性患者の介助をすることが多いです。繊細な方が多いですし、統合失調症の患者さんだと妄想につながる可能性など、不要なトラブルを避けるためです。
★入浴時の観察
入浴の時は、患者さんの皮膚状態を観察する絶好の機会です。(じろじろ見ると恥ずかしいので、適度に)
例えば自傷(リストカットなど)跡の状態の観察をします。新しく傷が出来ていないか、化膿していないか。消毒や、処方されている軟膏があれば同時に処置もします。
他に、夜中に転んで傷が出来ていないか(患者さん自身が忘れていることがあります)、
14:00 患者さんとお散歩
午前の「作業療法への送迎」でもお伝えしたように、患者さんの中には、医者の指示で「病棟の外を一人では出ていけない」といわれている時があります。一人だと安全に過ごせないためです。そのため散歩や売店へ行くときは看護師が同伴します。
他にも、歩行が不安定だったり、金銭管理がうまくできない(手持ちのお金以上に買いすぎてしまう)患者さんの場合でも看護師が一緒に出掛けます。
病院の中では、家と違って出来ることが限られています。さらに閉鎖病棟ともなると、散歩は大事な息抜きです。健康のため、ストレス軽減のためにもお散歩を楽しみにしている患者さんが多いです。ずっと室内だと息がつまりますものね。
14:30 患者さんの代わりにお買い物
患者さんの調子がかなり悪い時では、同伴であっても病棟の外に出てはいけないという医師の指示があります。その場合は、看護師が代わりにお買い物に行きます。事前に患者さんに買ってきてほしいものを聞いて、メモを片手にお買い物です。病棟の中では持ち込みが制限されているものも多いため、病棟のルールに照らし合わせながら購入していきます。病棟の外に出られない患者さんにとって、売店で自分の好きなお菓子やジュースを選んで買ってきてもらうことは楽しみの一つです。間違えないようにしっかりと確認が大事ですね。
そして、買い物が終わったらきちんと患者さんに報告。領収証も忘れずに。
15:00 ★開放観察の見守り
保護室で隔離されている患者さんは、状態が落ち着いてくるのとともに開放観察を行います。開放化s夏というのは、一定の時間を定めて隔離されている部屋から出て他の患者さんがいるホール(食堂)などで過ごすことです。一時的に隔離を中断する、ということですね。
落ち着いているとは言え、外の環境の刺激(音や光、においなど)で調子を崩したり、他の患者さんとトラブルになる可能性が高いので、看護師の見守りが必要です。患者さんの状態に合わせて、距離を調整しながら付き添います。まだまだ不安の大きい患者さんの時はそばで付きっ切りで。だいぶ安定している患者さんの場合は、離れたところから見守ります。
15:30 ★患者さんとのコミュニケーション
精神科ではとっっても大事な患者さんとのコミュニケーション。「話を聞いてほしい」と依頼されることも多いです。もちろん、決めた時間でなくてもこまめに相談には乗っていますが、じっくりと話を聞く時間は確保したいもの。患者さんの悩みにしっかりと向き合います。自分の病気のこと、薬への思い、医者には言えなかったこと、他の入院患者さんとのトラブル、家族との関係などなど。悩みはつきないものです。看護学校で習った受容と傾聴が大活躍です。
患者さんの相談を聞くうえで大事なこと
患者さんの悩みを解決するうえで、精神看護の知識ももちろん重要ですが、自分自身の今まで生きてきた経験が生かされる瞬間を多く感じます。「人間力」や「生活力」とでもいうのでしょうか。例えば、友達と喧嘩した時にどう解決したかな。町中で嫌な人に出会ったとき自分はどういう風に怒りを収めたかな、など。別記事で書きましたので、良ければどうぞ。
もちろん、嬉しかった話や楽しい話で盛り上がることもありますよ!作業療法で可愛いマスコットを作った、今度家族と外出に行く予定ができた、退院のめどがついたといった話や、共通の趣味の話など。患者さんの笑顔を見ると、疲れもふっとびます。患者さんから学ぶことはとても多いです。
16:00 業務のまとめ
夕方は業務のまとめをします。薬局から上がってきた薬を確認・処理したり、新しく変更された医師の指示について確認。今日やるべき業務はすべて終わらせたか、リーダーが中心となって確認します。
またカルテに書き忘れたものはないか気を付けながら、本日担当した患者さんを中心に記録をまとめていきます。もちろん、患者さんの対応をしたらその都度、記録が大原則なのですが次々に仕事がある忙しい日には書き漏らしも多いので気を付ける必要がありますね。
17:00 夜勤への申し送り
準夜(夕方から夜中までの勤務)さんが出勤してきたら、リーダーが患者さんの情報をまとめて申し送ります。限られた時間で必要な情報を簡潔に伝えていきます。最初は慣れないですが(そして慣れたあとも厳しい先輩がいるときは緊張しちゃいますが)、夜勤で患者の対応に困らないように引継ぎを行います。
17:45 退勤
精神科は残業が少ないです。医療的な処置が少ないため、定時に帰れることがほとんどです。これはとっても嬉しいです。精神科一番のおすすめポイントと言ってもいいでしょう。一般科では残業多い場合がほとんどですからね。
休憩室に誰かが置いてくれたお菓子をつまみながら、ちょっと一息ついて退勤します!
まとめ
精神科看護師の一日、いかがだったでしょうか?もちろんこれが全てではありませんが、少しでも精神科看護師の仕事内容についての疑問が晴れたら幸いです。
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